Thursday, December 10, 2009

小説

小説を読まなくなって久しい。いちばん最後に読んだ小説は、パリからの帰国直前に読み終えたヘッセの『ガラス玉演戯』だろう。日本に戻ってきてからスタンダールの『パルムの僧院』を読み直そうとしたが、途中で挫折した。

純粋に忙しくて、小説を読んでいる時間がなかったということもある。だが、それだけではないような気もする。おそらく、小説よりも現実のほうが面白くなってきたのだ。ジュリアン・ソレルの冒険を頭の中で追走するよりも、自分の人生を身体をはって展開するほうがエキサイティングになったのだろう。

小説の楽しみは、主人公に自分自身を重ね合わせ、想像の中で冒険を追体験するところにある。(『ボヴァリー夫人』のように冒険のない小説もあるが、フロベールは僕の好みではない。ただ、フロベールが好きな人には興味がある。)だが現在、自分の現実の人生が十分に刺激的なので、あえて小説に冒険を求めようとは思わない。

人文系で言うならば、小説よりも哲学に魅力を感じる。最近だと、レヴィナスの『全体性と無限(Totalité et infini)』が面白かった。小説も哲学も、現実に対する新しい視点を読者に与える。ただ哲学のほうが、記述がより直接的なのだ。小説を読んでいると、どうもまどろっこしさを感じてしまう。

そう言えば、このところ漫画の『バガボンド』にハマリまくっている。基本的に漫画は買わないのだが、この作品は例外。漫画でしか伝えられない哲学がここにはある。そしてその哲学に、けっこうギリギリの状況のときに励まされたりもしてきた。物語が肌に合わない、論述のほうがいい、という訳でもないらしい。問題は情報の密度なのだろう。21世紀の読者にとって、19世紀や20世紀の小説は遅すぎる。

リンク:『バガボンド』の哲学的分析(by 内田樹氏)

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